悪役令嬢にならないか?
その領収書は、ミエルが養父であるオスレム男爵から預かったものに違いない。それを人の目のつかない場所に隠せと指示されたのだろう。そうでなければ、地下書庫のぶ厚い本の間に、あのようなものを挟むようなことはしない。
考えてみれば、あの時期は半期毎の会計監査が行われる時期の直前でもあった。屋敷に置いておけないものを、地下書庫に隠したのだ。
「ミエルさん。あなたは、誰も足を運ばないと思って学園の図書館の地下書庫を選んだようですが。あそこはわたくしの活動場所でしたの。ご存知ありませんでしたか?」
地下書庫に心当たりはあるようだ。ミエルの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
「ミエル……。どういうことだ……」
初老の低い声が響く。ミエルの養父であるオスレム男爵が、彼女を威圧的に見下ろしていた。
「ご、ごめんなさい。お義父様。どうか、ぶたないで……」
ミエルは養父から顔を守るように両手で頭を覆い、腕で顔を隠した。そのままその場に座り込む。それが反射的な動作に見えた。
「今、ミエルさんからは聞き捨てならない言葉が聞こえたようですが……。オスレム男爵、一体どのようなことなのでしょう? まさか、娘であるミエルさんに暴力を振るっていた……とか? そんなことはありませんよね。だって、慈善事業が大好きで、孤児院からたくさんの子を引き取っているオスレム男爵に限って、そのようなことはありませんよね?」
考えてみれば、あの時期は半期毎の会計監査が行われる時期の直前でもあった。屋敷に置いておけないものを、地下書庫に隠したのだ。
「ミエルさん。あなたは、誰も足を運ばないと思って学園の図書館の地下書庫を選んだようですが。あそこはわたくしの活動場所でしたの。ご存知ありませんでしたか?」
地下書庫に心当たりはあるようだ。ミエルの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
「ミエル……。どういうことだ……」
初老の低い声が響く。ミエルの養父であるオスレム男爵が、彼女を威圧的に見下ろしていた。
「ご、ごめんなさい。お義父様。どうか、ぶたないで……」
ミエルは養父から顔を守るように両手で頭を覆い、腕で顔を隠した。そのままその場に座り込む。それが反射的な動作に見えた。
「今、ミエルさんからは聞き捨てならない言葉が聞こえたようですが……。オスレム男爵、一体どのようなことなのでしょう? まさか、娘であるミエルさんに暴力を振るっていた……とか? そんなことはありませんよね。だって、慈善事業が大好きで、孤児院からたくさんの子を引き取っているオスレム男爵に限って、そのようなことはありませんよね?」