悪役令嬢にならないか?
「もう、これ以上、何も言うことはないな?」
 項垂れるオスレム男爵に向かって、アルヴィンは一瞥する。だが、オスレム男爵も負けてはいない。
「だが。エリーサ嬢がミエルを虐げたのは事実だろう? それも罰せられるべき事案ではないのか?」
 この期に及んで、そういったことを口にできる図々しさは褒めてやりたい。リスティアはアルヴィンとウォルグに目配せをしてから口を開く。
「まず、お茶会の件ですね。あれは王妃様主催のお茶会になります。ですから、王妃様が選んだ人たちしか参加ができない茶会なのです。残念ながら、ミエルさんは王妃様に選ばれなかった。ただそれだけのこと」
 王妃が定期的に学園の生徒を誘って茶会を開いているのは、関係者であれば誰でも知っている。だが、仮にも王妃である。成績や家柄など、総合的に判断され選ばれた者だけが参加できるのだ。
「あとは、そう。腕輪でしたね。あれはミエルさんのほうからエリーサ様に、卒業パーティーでつけて欲しいと、涙ながらに訴えてきたものになります。エリーサ様は何度もお断りしておりましたが、あまりにもミエルさんがしつこかったため、受け入れるようにとわたくしが助言したまでです。だって、このようなみすぼらしい腕輪が、エリーサ様にお似合いになると思いですか?」
 リスティアは、他の者からも同意を得るかのように、ゆっくりと周囲を見回す。
「見る者が見ればすぐにわかりますよ。エリーサ様に不釣り合いな腕輪であることくらい。ですが、この腕輪も、オスレム家では貴重な財産でしたのよね?」
 小馬鹿にしたような言い方に、オスレム男爵の顔は沸点を越えそうなほど、赤くなっている。
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