悪役令嬢にならないか?
「それから、階段で押した、でしたっけ? 残念ながらあれはエリーサ様ではございません。ミエルさんの身体を押したのはわたくしです。だけど、優秀な取り巻き、失礼。ロバート様がすぐに気づいてしまいましてね。残念ながら、ミエルさんは階段下まで転げ落ちることはありませんでしたの。ですが、あれだけのことで階段から落ちそうになるなんて。ミエルさんはよっぽど足がお悪いのですね。もしかしたら、服で隠れるようなところに怪我をされている、とか……」
 だが、それすらリスティアとウォルグが示し合わせて行ったものである。リスティアは、彼らからミエルがオスレム男爵から虐待を受けていないか確認してほしいとも指示を受けていた。
「人の娘をなんだと思っている」
 耳の先まで真っ赤にしたオスレム男爵は、わなわなと震えている。
「あら。それはわたくしのセリフです。あなたは、養子をなんだと思っているのですか? 血の繋がりはなくても書類上はあなたの子。あなたがきちんと養育する義務があるのです。虐げる権利があるわけではありませんわ」
 オスレム男爵もそれ以上何も言い返せないのか、悔しそうにぐぬぬぬと唸っていた。
「見損なったぞ、リスティア嬢」
 まさしく捨て台詞に相応しい台詞である。このセリフを引き出せたら、ある意味リスティアの勝ちだ。
「えぇ、見損なってくださって結構です。わたくしは悪役令嬢ですから、嫌われるのがわたくしの役割です」
< 42 / 56 >

この作品をシェア

pagetop