悪役令嬢にならないか?
 そうやって、黙って彼女を見続けて一年が経ったある日――。
 ウォルグは父親である国王から呼び出された。
「エリーサ嬢の素行調査を頼める人物に心当たりはないか?」
 この国では、王太子妃となる人物の素行調査を行う。書類上の表面的なものだけでなく、できるだけ相手に近づき人間性を確認するのだ。
 エリーサの人柄は昔から知っているが、それでも慣例であるため、第三者による調査は必要とのことだった。
 口が堅く、公平で公正であり、信頼できる人間。そのような人物がいなければ、ウォルグが調査しろとまで言われる始末。
 だが、ウォルグには一人だけ心当たりがいた。むしろ、彼女は適任だと思うし、彼女に声をかける絶好の機会であるとも思っていた。
 無意識のうちにリスティアの名を告げていた。
「ウォルグ。お前がその名を口にする意味を知っているな?」
 ここで彼女の名を出すということは、父王にウォルグの気持ちを伝えたことに該当する。
「はい……」
「そうか」
 国王も思うところがあるのか、静かに目を伏せる。これで彼女は国王にも認められた。
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