あの日ふたりは夢を描いた


そんな出来事があった放課後、私は晴美古書店にいた。

学校の最寄駅から乗り換えなしで十分。

叔父さんが経営している古書店は、密集する住宅地の中に違和感なくひっそりと佇んでいる。

週に三日、手伝いという名のアルバイトを初めてもう半年近くになる。

学校に上手く馴染めない姪っ子の話を、姉である私の母から聞き心配したのだろう。

学校以外にも居場所を持ってほしいと、母親の弟である叔父さんが声をかけてくれた。

薄暗い店内のスピーカーからは、どこかで耳にしたことがあるような古い洋楽が流れている。
たぶん叔父さんの趣味だろう。

そんな音楽を聴き流しながら、棚に向かって上段にある本の整理をしているとき、突然名前を呼ばれた。
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