あの日ふたりは夢を描いた
「……あ、ありがとう」

「本当に本が好きなんだな、並木は」

「えっ?」

本が好きだなんてどこかで言ったっけ……。記憶を手繰り寄せるけど心当たりがない。

「あぁ、俺のこと覚えてないと思うけど、去年図書委員で一緒だったんだよ。委員会の集まりとかで結構会ってたんだ」

「……あぁ、ごめん。私あんまり周りを見るのが得意じゃなくて。真柄くんがいたの知らなかった」

委員会の集まりは月に一度くらいあったけど、自分が話す場面はあまりなかったし、人が多くて緊張するからずっと視線を下げたままだった。
周りに誰がいたかなんて全然覚えていない。
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