あの日ふたりは夢を描いた
「別にいいんだ。でも今日、並木の意外な一面が知れてよかった」

「……私のことなんて、知らなくていいよ。でも真柄くんはどうしてここに?」

「俺、ここからわりと近い場所に住んでるんだ」

学校からそこまで離れてはいないので不思議ではないのだけれど、個人経営の書店で独特な雰囲気があるので、今どきの高校生が来店するのはめずらしい。

「そっか。ご近所さんだったんだね」

「うん。だけどここ、大通りからは離れてるし、ちょっと奥まった場所にあるから最近まで気づかなかった」

私的にはそこも気に入っているポイントである。大手の古本チェーン店だったら客層も違うし出入りも激しいため、緊張して私じゃ勤まらない。
< 14 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop