あの日ふたりは夢を描いた
『がっかりさせてごめんね。私はもう、あなたが想像するような人じゃない』

そんな言葉を投げ捨てるように言われてしまった。

きみに変わってほしいだなんて、ぜんぜん思っていなかったよ。

今のきみの魅力もよく知っているから。

だけど無意識に、あの日のきみを目の前のきみにいつも重ねていたのかもしれない。

僕が良いと思っていることが、きみにとっても良いとは限らないのに。

それなのに僕は、『きみにまた夢を追ってほしい』なんて言葉を軽々しく言ってしまった。

『昔の夢なんてもう忘れたよ!なんでしつこくそんなこと言うの!

……もう、その話はしないで』

温厚なきみが涙を浮かべて僕にそう告げた。

嫌な記憶を思い起こさせてしまったようだ。

きみが心に夢を封じ込めていたなんて知らなかった。
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