あの日ふたりは夢を描いた
人の気持ちは目に見えない。

そんな思いで呆然と立ち尽くしたあと、我にかえってきみを追いかけてみたけど、見つけたときには僕の入るスペースなんてなかった。

泣いているきみは同じクラスの真柄に抱きしめられていたから。

真柄ときみが仲良さげなのは知っていた。

真柄がきみを見る目が他の人を見るのとは違って、いつも優しいのにも気づいていた。

真柄はきみのことをよくわかっていると思う。僕の次にね。信頼できる男だ。

だけど見ていられなかった。悶々とする気持ちを抑えられなくてその場から立ち去った。

僕はきみに、憧れ以上の感情を抱いているのだから。

きみにこのまま距離を置かれてしまうのはどうしても嫌だった。

せっかく近づけたのに、少しずつ笑顔を向けてくれるようになったのに、ここで終わるなんて。

まだ一緒にいたいから。
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