あの日ふたりは夢を描いた
調子が悪く学校に行けない日が続いていたが、少し体が軽くなった日があった。

もう放課後の時間になってしまっていたが制服を着て学校に向かった。

ひどく雨の降っていた日だった。学校の門の前でびしょ濡れになったきみを見つけた。

『こんなにびしょ濡れで風邪ひくだろ』

心配でめずらしく感情的になってなってしまった。

『とりあえず行こう。そのままだと風邪引くよ』

雨に濡れた彼女の手を引いて家に連れて帰り、あの日のことを謝った。

『きみに嫌な思いをさせてごめん。泣かせてごめん』

きみは慌てた様子で『謝ることなんてなにもないよ』そうは言ってくれたけど。

好きな子を泣かせた罪は重いんだよ、男として。

僕はようやく自分の思いを彼女に伝えることができた。

『あの日、きみが夢を語ったあの日。僕はきみから夢への一歩を踏み出す勇気をもらったんだ』

『……大げさだよ』

彼女は困ったように笑っていた。だけど僕は至って真面目に答える。とても大切なことだから。
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