あの日ふたりは夢を描いた
忘れられない夏


期末テストが無事に終わり、あと数日で夏休みが始まろうとしていた。

浮かれ気分で夏休みの予定を話す声が校内のあちこちで聞こえる。

私たちは一緒に屋上で昼食を取った。

お弁当を食べ終わってすぐ、私は照れくさかったのだが、彼にあるものを見せることにした。

「相馬くんにちょっと見てほしいものがあって」

お昼を食べ終えて眠くなったのか、大きなあくびをしながらこっちを向いた彼。

「ん?なに?」

「……書き始めた小説。まだ途中なんだけどね」

「えっ?もう書き始めたの!本当に?読んでいいの?」

急にテンションが上がった彼に圧倒される私。

「う、うん。素人の書いた文章なんて大したことないんだけどね」

「読みたい読みたい」

彼は小さい子どもみたいにはしゃいで、私から嬉しそうにスマートフォンを受け取り、スクロールして作品を読み始める。
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