あの日ふたりは夢を描いた
「よし、ついたよ」

「ありがとう」

「まずは普通に手持ち花火から」

彼は花火セットからシンプルな手持ち花火を二本取り、一本を私に渡してくれた。

それを笑顔で受け取り、二人で横に並び一本のローソクに火をつける。

ほぼ同じタイミングでしゅーっと音がして、勢いよく火花が前方へ噴き出した。

「懐かしいなぁ」

「相馬くんも花火久しぶり?」

「うん、もうずっとやってなかったよ。今年の夏はいい夏だなぁ」

マイペースにそんなことを言って子どもみたいに花火を振り回しているが、持続時間は意外と短く呆気なく終わってしまった。

「あぁ、意外と短いんだな」

「ほんとだね。だけど大丈夫だよ。これだけの量があるから」

「そうだな」

徐々に二人のテンションは上がり、欲張って手に二、三本の花火を持ち始める。
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