あの日ふたりは夢を描いた
空中に円やハートを描いたり、自らがくるくると回ったりしながらはしゃいだ。

「最高に楽しい時間だな」

「ほんと。花火ってこんなに楽しかったっけ?」

花火が楽しいのか彼といる時間が楽しいのか考えたけど、その両方だと気づく。

ある花火に火をつけると、雪の結晶のような火花があちこちはパチパチと飛び散った。

「あぁきれい」

「この花火いいな」

「うん」

そんなまったりしたムードの後は、噴き出し花火に火をつけた。

「おお!意外と迫力あるな」

「ね、思ってたよりすごい」

噴き出し花火越しに見る彼の笑顔はきらきらしすぎていて、なんとも言えない気持ちになった。


「……なんでかな」

小さい声で呟いた私の声は彼に聞こえたみたいだった。

「ん?」

「ううん、なんでもない」

夏の魔法にかけられたのか、少しセンチメンタルな気持ちになっているようだった。
< 173 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop