あの日ふたりは夢を描いた
……ねぇ相馬くん。

あなたはアイドルだから私はこれ以上のことを望んではいけないと思ってる。

だから自分の気持ちはなにも伝えないけど、

私は今、とても幸せだよ。


噴き出す花火を挟んで彼と目が合う。

彼は私の顔を見て不思議そうに顔をかしげていた。

その仕草を見てただ微笑み返すと、彼も同じように微笑んでくれた。

「楽しいな」

「うん、楽しい」

ただ二人でなんてことない会話をした。

あんなにあった花火がいつの間にかなくなっていた。

「すごい。あっという間になくなるんだね」

「もっと買ってきてもよかったな」

「それは買いすぎだよ。充分楽しんだよ。本当にありがとう」

頭を下げると「まだ終わりじゃないよ」と、そんな声が聞こえた。

「え?」

「やっぱり最後は線香花火で締めないとね」
 
「……あぁ、その存在忘れてた」

「はい、最後まで楽しもう」

明らかに二人分ではない量の線香花火を渡され苦笑いする。
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