あの日ふたりは夢を描いた
線香花火に火をつけると、独特な匂いがした。

音といい火花の飛び方といい、よくできた花火だなぁと感心する。

なにも考えずにただ線香花火に魅了されていると、次から次に手元から花火が消えていく。

いつの間にか二人とも最後の一本になっていた。

「……本当に本当に最後だね」

「この時間がずっと続いたらいいのにな」

「また来年、できたら嬉しいね」

「来年かぁ。どうだろうなぁ、先のことはわからないからね」

「まぁ、そうだよね」

彼の言った言葉に少し寂しさを覚える。

二人の顔がゆらゆらと揺れるローソクに照らされ、なんだかしんみりとした雰囲気になっていた。
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