あの日ふたりは夢を描いた
『学校はどう?』そんなありきたりな話題も、私には振ってこなくなった。

「うん。お風呂入ってくるね」

単身赴任中で家にいないが有名企業に勤める父、料理や編み物を趣味とする専業主婦の母、名の知れた国立大学に通う兄、それと私。

小学生までは明るく優秀で目立つタイプだった私を、お母さんは大事に手をかけて育ててくれていた。

だけどこんなふうに落ちこぼれてしまった今、お母さんの興味は兄に注がれている。

寂しい気持ちはありつつ、毎朝お弁当を作ってくれたり今みたいに美味しいご飯を作ってくれているのを思うと、私はまだ完全には見捨てられていないのだと理解している。
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