あの日ふたりは夢を描いた
クラス中がざわざわし始める。

「……ちょっと相馬くん?なに勝手なこと言ってるの。私にそんな大役できないよ……」

そんな不安げな私を見て、彼は楽しそうに笑った。

そして隣からぐいっと耳元に顔を近付け、私にしか聞こえないぐらいの声でささやいてきた。

「書けるよな?小説家志望のきみだったら」

爽やかな笑顔とともに悪魔の囁き。

弱みを握られている人みたいに、なにも言えなかった。


「僕はできるって信じてるよ」

つけ加えてそう言われた。

ずるいなぁ本当に。彼は自分のペースに巻き込むのが上手すぎる。

どうしよう……と頭を抱える私をよそに、田代くんがどんどん話を進めてしまい、

「じゃあ脚本担当は並木さんで!」と威勢のいい声を上げた。

なぜだかクラスからは拍手が上がる。

みんな文化祭という非日常感でテンションでおかしくなっているんだ。
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