あの日ふたりは夢を描いた
脚本が早く出来上がらないと劇の練習だってできない。

なるべく早くと、毎日焦っていた。

「真白、おかえり」

バイトから戻ると、お母さんがリビングで温かく迎えてくれた。

この空間が私の疲れた心をいつも解きほぐしていく。

「お母さんただいま」

「最近やけに疲れてるんじゃない?大丈夫なの?」

「あぁ、うん。十月の文化祭でオリジナル劇をするんだけど、その脚本を書くことになって」

「あらぁ、随分と大役を任されたわね」

「プレッシャーが大きくて、ときどき投げ出したくなるよ……」

普段感じている不安をお母さんに吐き出した。

「真白なら大丈夫よ。だってあなたは書けるじゃない。昔から書くことが好きじゃない」

「……うん」

「きっと素敵な劇に仕上がるわ」

「うん。そうなるように頑張る」
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