あの日ふたりは夢を描いた


屋上での出来事以来、彼とまた話しができたのは、それから一週間が過ぎた頃だった。

彼は有名アーティストが所属する大手事務所の練習生として活動していた。
簡単に言うなら、彼はアイドルの卵だった。

入学当初からこの学校にアイドルの練習生がいるという情報が校内に知れ渡っていたが、私は友達もおらずそういう情報には疎かったため、二年生になって同じクラスになるまで彼を知らなかった。

休み時間になると毎日のようにクラス前に人が集まり騒がしい。

彼を一目でも見ようと、学年、男女関係なく集まる。デビューしてるわけではないにしてもすごい人気だ。

だけど彼は忙しい人で、学校も休みがちだった。遅れてきたり早退したり、慌ただしい毎日を送っているのが同じクラスにいるとよくわかった。

それなのに彼はいつも笑顔を絶やさず他人に優しく、本当にプロ意識の高いアイドルだった。
< 20 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop