あの日ふたりは夢を描いた
「……今度はなんの用ですか?」

彼を見ず不愛想に言い放つ。
自分が置き忘れたのがいけないのに、ノートを見られてしまったことを根に持っていた。

「一緒に食事しよう」

人と食事ができないからこんな大教室に一人でいるというのに、彼にはそれがわからないのか。

それとも人の気持ちを考えられないただの無神経な人なのか。

「人と食事するのが苦手なんです。あと話すことも目を合わせることも……」

嫌味のようにぼそぼそと言い放った。

「昨日はありがとう」

私の話を遮り明るい声でそう言われた。

人の話を聞かない彼に苛立ちつつ、昨日なにかあったかな……と記憶を思い起こす。
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