あの日ふたりは夢を描いた
彼女が戻って来たので横になっていた体を起こし、『なに話したの?』なんてしらじらしく聞いてみる。


『それは言えないよ』

思いやりあふれる彼女らしい言葉が返ってきて安心した。


『ねぇ真白』

きみのことをちゃんと見てくれる人がいて嬉しいよ。


『真柄はすごいいいやつだよな』

真柄はきみにふさわしい。だから嬉しいんだけどさ……


『……だけど』

だけどまだ嫌なんだ。


『……自分勝手なのはわかってるけど、今はまだ、僕を一番に考えていてほしい』

今はまだ、真柄のところへ行ってほしくない。

『今までもこれからも、相馬くんが一番だよ』

きみは僕のことを知らないからこそ、安心と幸せをくれる存在なんだ。

……自分勝手だろうか。だけど最後まできみの笑顔を見ていたい。

だからいい、このままで。
< 245 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop