あの日ふたりは夢を描いた
本心を話すと、僕はきみに覚えていてほしかったんだと思う。

自分が消えた世界でも、きみの心のほんの片隅にでも僕が残っていてくれたらいいと。

病気がわかった日からたぶん、そう願いはじめていたんだ。

高校二年生になって同じクラスになれたのは、本当に運命なんじゃないかと思う。

神様はときどき意地悪で、ときどき幸せをくれる。

そしてきみが大切にしていたノートを化学室に置き忘れていったのも、偶然ではなくて必然だったと僕は思ってる。


……僕はきみに大切なことをなにひとつ話さなかった。

だけど悪く思わないでほしい。決してきみを信頼していなかったからじゃない。

きみに僕のことを話したら、優しいきみはきっとすごく心配して僕のことばかりになるだろ。
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