あの日ふたりは夢を描いた
放課後になってみんな帰ってしまった教室に、自然と私と吉浜くんだけが残っていた。

私たちはもしかしたら、悲しみを分け合いたかったのかもしれない。

吉浜くんは椅子を動かし静かに身体を私の方に向けた。

「……本当にいなくなっちゃったの?」

まるで独り言を呟くように、気づくと声が出ていた。

「ああ」

「……吉浜くんは、病気のこと知ってたの?」

「うん、聞いてた。だけど詳しく知っていたわけじゃない。余命とか、そういうのがあったのかもしれないけど理央は言わないからさ」

「そう。……私は、なにも知らなかったよ」

彼の最後を吉浜くんが教えてくれた。

吉浜くんは彼の亡くなった日、一緒に過ごすことができたそう。
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