あの日ふたりは夢を描いた
彼が亡くなってから一ヶ月が過ぎた土曜日。

なにもかもが空っぽで、今でも抜け殻のような毎日を送っている。

何もしていなくても気づくと涙が溢れていた。

部屋を出て階段を降りリビングのドアを開けた。
食欲がなくても何かを食べなくては生きていけない。

中央にある時計を確認すると時刻は十一時を指していた。

家族もさすがに心配しているようだった。

だけどあるとき、このままじゃ駄目だと思った。

彼がどうして最後までなにも言わなかったのか、段々と想像できたから。

こんなふうに泣く顔を、悲しむ顔を見たくなかったんだ。
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