あの日ふたりは夢を描いた
理央が学校を休む日が続いたから、溜まっていたプリントを届けに理央の家に行ったとき、落ち込んだ表情の理央が出てきたことがある。

家に上がらせてもらって話を聞くと、

「彼女のこと、泣かせた」

静かにそう話していたことがあった。

「どうして?」

こんな理央を見たことがなかったから正直驚いた。

アイドルもやっぱり人間なんだなぁと、少し安心もしたけど。

「彼女の気持ち、全然わかってなかったから。傷つけた」

落ち込む理央の肩にぽんと手を置く。

「人の気持ちなんて目に見えるものじゃないから、わからなくて当然だよ」

「一番の理解者でありたいって思ってたのに、彼女にいろいろ求めすぎてたのかもしれない」

「また並木とちゃんと話したらいいよ」

「……うん」

それでも浮かない顔をする理央を見て、少し微笑ましくもなっていた。

人間味があって俺は嬉しいよ。

「……本当に大切なんだな、彼女のことが」

考え込んでいる理央は、小さく呟いた俺の言葉は聞こえていないようだった。
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