あの日ふたりは夢を描いた
「並木、楽しそうだな」

クラスの端で遠目から並木の様子を見ていた俺は、隣の理央に話しかけた。

「あれが本来の彼女だよ。俺は誰よりも先に彼女の魅力に気づいたんだ」

理央はさらっとそう言って満足気に微笑んでいた。

俺は理央と中学のときからずっと一緒にいるけど、ここまで楽しそうな理央を見るのは初めてだった。

夢に向かってひたすら一生懸命な理央だったけど、今は人生を楽しんでいる感じが伝わってくる。

「理央も今、すごく楽しそうだよ」

「えっ?」

「自分じゃ気づいてない?」

驚いた顔をして少しうつむきがちに考えているようだった。
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