あの日ふたりは夢を描いた
「並木」

閉店時間が近づいてきた頃、私の名前が呼ばれた。

「……真柄くん。どうした?」

お客さんというより、明らかに私に用事があって来たような感じだった。

「急にごめんね。……バイトが終わったら少し話せるかな?」

「あ、うん」

左の腕時計を確認する。

「あと十五分ぐらい待っててもらえる?」

「もちろん。店の外で待ってるね」

それだけやり取りをして真柄くんは外に行ってしまった。

私はいつもより早く閉店作業を終わらせる。

エプロンを外し学校のリュックを背負って外へ出た。

真冬の凍えるような寒さの中、紺色のコートを着て赤いマフラーをした真柄くんが入り口付近に立っていた。
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