あの日ふたりは夢を描いた
「きみは本が好きなの?」

僕のうしろでご飯を食べているきみに問いかけた。本当はわかっていて聞いたんだけど。

「……あ、うん。昔からすごく好き。古書店でアルバイトもしていて」

おそらく人と話すことが得意ではない彼女が、いつもより明るい声でそう言った。

きみはクラスでいつも下を向いていてしかめっ面なイメージを持たれているかもしれないけど、僕はきみも知らないだろうきみの笑顔を知っている。 

入学して間もない頃だった。授業の調べ学習に必要な資料集を借りようと、普段行かない図書室に放課後出向いたとき、きみを見つけた。

一目見て彼女だとわかった。僕がずっと会いたかった、憧れていた並木真白がそこにいた。
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