あの日ふたりは夢を描いた
「……いただきます」

手を合わせ小さくそう挨拶し、箸で半分に切った卵焼きを口に運ぶ。

お母さんの味を噛み締めながら静かに口を動かしていると、


「並木真白(なみきましろ)」

風の音だけが聞こえる屋上で、どこかで聞いたことのある声が私の名を淡々と呼んだ。

風に吹かれ顔に張りつく長髪を、箸を持っていない左の手で押さえながら振り返る。

そこにいたのはクラスメイトの一人だった。

相馬理央(そうまりお)。

新しいクラスになって間もないため、クラスメイト全員の顔と名前が一致するわけではないが、私は彼の存在をなんとか知っていた。

彼がクラス内で、いや学校中で目立つ存在であるからだ。
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