あの日ふたりは夢を描いた
にこにこと本に夢中のきみを見ているとこっちまで微笑ましくなっちゃって、
「あぁ、本の中の世界が楽しいんだなぁ」なんて思いながらしばらく見ていた。

本の内容が一区切りついたのか、本についている紐のしおりを挟んだあと、パタリと静かに本を閉じ、頬杖をついて左側の窓から見える桜をじっと眺めていたね。

それから眠くなったのか、本を顔の前に持ってきて口元を隠しながら一つ大きなあくびをしたきみ。

そんな上品だけどマイペースな姿が、また僕の心を揺さぶった。

そのあとはまた本を開いて物語の世界に入り込んでしまった。

きみは僕がそこから離れるまでの一度だってこっちを見ず、ただ目の前にある本を読み耽ていた。
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