あの日ふたりは夢を描いた


GWが終わり休み気分が抜けないのか、クラス内の大多数の人に気持ちの緩みが生じていた。

そんな四時間目の数学の時間。
お腹も空いて集中力も落ちてきているはずなのに、クラス内では誰一人居眠りすることなく緊張感に包まれていた。

声が大きくて威圧感のある怖い先生が担当だからだ。

私も緊張でいつもより背筋が伸びる。黒板に書かれたポイントをメモしようと顔を上げたとき、坊主頭で黒縁眼鏡をかけたその先生と目が合ってしまった。

すぐに視線を逸らすが時すでに遅し。

「並木、問一の答え黒板に書いてみろ」

この先生は返事に厳しい人なので、なんとか絞り出すように返事をする。

「……は、はい」

少し裏返ってしまった声に恥ずかしさを感じながら、答えの書いたノートを右手に持ちロボットのようなぎこちない歩行で教壇に上がる。
< 43 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop