あの日ふたりは夢を描いた
「並木、解き方はわかったか?」

過ぎ去ったと思った嵐がまたやってきた。何人かの人が私を見る。

私は一度深く頷き「……はい」と小さく返事をした。

黒板の答えと私のノートの答えは一致していた。


「相馬、よくできた。席に戻っていいぞ」

「はい」

相馬くんは軽やかな足取りで席に戻った。

私を理解して助けてくれた。感謝の気持ちでいっぱいなのに、情けない姿を見せてしまった恥ずかしさで彼の方を見れなかった。

私は本当に駄目な人間だ……

そのあとの授業は耳に入らなかった。失敗を気にして自分を責めていた。

長く感じた授業が終わり、緊張が解けたクラスにみんなの笑顔と騒がしさが戻る。

私はいつにも増して浮かない顔で、屋上に行くための階段を上がっていた。

屋上までの階段を上がりきりドアを押し開ける。
< 46 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop