あの日ふたりは夢を描いた
「お!お疲れさま」

約束したわけじゃないのにすでにいて、自前のお弁当を広げている彼が私に軽く手を挙げる。

どうしてここにいるの?と、そんな面倒なこと今は聞く気になれない。

「……ありがとう。助けてくれて」

ただひと言、それだけ言った。


「僕はなにも」

彼は胡座をかいて箸でおかずをつまんでいる。

「あのまま時間が流れてたら、私泣き出してたと思う」

「答え、わかってたんでしょ?きみは賢い人だもん」

「わかってても意味ないよ。その場に適応できないと、社会で生きていけない」

「人には得意不得意があるよ。気にすることじゃない」

彼はアルミホイルで包まれたおにぎりを口いっぱいに頬張る。
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