あの日ふたりは夢を描いた
「優しいんだね、あなたは本当に」

「きみは僕の大切な人だからね。とことん優しくするさ」

「気持ちは嬉しいけど……」

「早く食べな、時間なくなるよ」

彼の隣に腰を下ろしお弁当を広げる。

「……いただきます」といつも通り手を合わせて小さく挨拶をし、静かに食べ始める。

しばらく会話がなかったが、先に昼食を終えた彼が、「ここは風が気持ちいなぁ」と呑気にひと言呟いた。

私も続いて食べ終わり、お弁当を片付ける。

体育座りをしながら目を閉じ風を感じていた彼が、私をちらっと見た。

「おっ食べ終わった?」

「……うん」

「どうした?」

私の沈んだ気持ちを察知したようで、彼が首を傾げてこちらを見ている。
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