あの日ふたりは夢を描いた
「……あ、真柄くん。おはよう」

誰かに挨拶されるなんて久しぶりで、自分の口から出た『おはよう』に違和感すら感じる。

「学校まで一緒に行こう」

「……う、うん。私でよければ」

もうあと数分で着く距離なんだけど、そんなことはとりあえず置いておく。

「最近どう?」

「さ、さいきん?」

広すぎるテーマを投げかけられ一瞬固まる私。

「クラスとかバイトとか」

「……あぁ、うん。特に変わりないよ」

ごめん真柄くん、せっかく話しかけてくれたのに面白い話題を提供できなくて……

申し訳ない気持ちが心の中を埋め尽くす。

少し沈黙ができたものの、雨の音でそれほど気にならない。
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