あの日ふたりは夢を描いた
「並木はさ、相馬と仲いいの?」

「……相馬くん?まさか」

急に相馬くんの名前が出て驚くとともに、首を左右に振って全力で否定した。

「仲がいいだなんて、とんでもない」

「そっか。近くを歩いてるの見かけたことがあったから、ちょっと気になっちゃって」

あぁ、やっぱり迂闊に彼と一緒に行動するのはよくないな。

こんなふうに勘違いが生じてしまうから気をつけないと。

「……偶然だよ。たまに話はするけど、人気者の彼と仲よくなんてできないよ」

「そう」

小さくそう答えた彼の表情は、傘の影でよく読み取れなかった。

そのあとも彼と、宿題の話や好きな本の話など、他愛もない会話をしながら通学路を歩いた。
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