あの日ふたりは夢を描いた
「じゃ、そういうことで気を取り直して始めよう」

なにもなかったようにまた話し合いが始まった。

一人ひとり意見を言う場面が回ってきたとき、私は言葉につかえて思ったように話せなかったけれど、吉浜くんはそれも上手く汲み取ってまとめてくれた。

現代社会の授業がなんとか終わり、みんなが六時間目の準備をしているとき、勇気を振り絞って吉浜くんに話しかけた。

「……吉浜くん。さっきはどうもありがとう」

私は誠意を持って頭を下げる。

吉浜くんは机から教科書を取り出しながら答える。

「大したことじゃない。それに、言われてるんだ理央に」

「……えっ?」

突然出てきた相馬くんの名前に驚く。
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