あの日ふたりは夢を描いた
理央と俺は家が近かったこともあり、偶然地元の同じ高校を選んでいた。

高校に入学して少し経った頃、学校から最寄駅に続く川沿いの道を、理央と二人で歩いていた。

桜が散って鮮やかな緑になった木をぼんやり見ながら、なんてことない会話をしていたときだった。


「尚のクラスに並木真白いるだろ?」

突然そんなことを言われ思考が止まる俺。
理央から女性の名前が出るなんて初めてのことだったから。

「……並木?あぁ、うん」

「彼女、どんな人?」

「どんなって言われても。……大人しい人。目立つタイプじゃない」

そこまで彼女と接点のなかった俺は、イメージだけで淡々と答えた。

「そう」

「彼女がどうかした?」

「彼女、俺の初恋の人。現在進行形で」

「えっ?」

照れも隠しもせず、爽やかな笑顔でそう告げてきた。
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