あの日ふたりは夢を描いた
「理央の連絡先、教えておこうか?」

「いや、いいんだ」

理央は静かに首を振った。

「どうして?」

アイドルだとか関係なく、大切な友達の恋なら全力で応援するのに、素直にそう思っていた。

「見てるだけ十分。今は夢のこともあるし」

心地よい風が俺たちを包み込む中、理央は優しい表情でそう答えていた。

「そう。気持ちが変わったら言って。なんでも協力するから」

「ありがとう」


並木真白……

クラスではまったく目立たないタイプだけれど、理央が思いを寄せるぐらいだから、きっと二人には特別ななにかがあるんだろう。

そしてそのときの理央は、並木と近い関係になることをまだ望んでいなかった。

たぶんこのささやかな日常が、いつまでもずっと続いていく思っていたんだ。
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