あの日ふたりは夢を描いた
苦手な授業を全部避けるなんてことできないけれど、それでも保健室のベッドを借りる常連になっていることに間違いない。

カーテンが少し開いて、髪をハーフアップにした若くて上品な先生が顔をのぞかせる。

「並木さん、先生ちょっと職員室に用事があるから席外すわね」

「あ、はい」

「何かあったら職員室まで来てちょうだい」

優しい笑顔を向けて先生は去っていった。私にしか声をかけなかったので、保健室には私一人みたいだ。

私の症状をよく理解してくれている先生は、無理に授業に出席させようとしない。

それが私にとってはとてもありがたいことだけれど、他人から見たらただの甘えに見えているだろう。
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