10歳差の王子様
1人で歩く学校からの帰り道。
なんだか気が乗らない。トボトボと歩く足がヤケに重い。

…今日の朝も元気なかったな、あさひ。

笑ってるようで笑ってなくて、あれで笑ってるつもりなんだもんな。おれの前ではそれが当然かのように振る舞ってくる。

ついでに太陽と美羽の関係も悪い。
こっちはわかりやすく無視したり聞こえるようにグチ言ったりして、むかつくんですアピールがすごい。日に日に悪化する負のループみたいで、こっちもこっちで手が付けられない。

美羽もきっと、たくさん泣いたのかな…

家に帰っても学校行ってもつまんないな。


「はぁ…」


知らず知らずにタメ息が出てしまった。

おれのしあわせが逃げていくよ…。

タタタッと軽い足音が聞こえた。聞き慣れてるはずの聞き慣れてない音にゆっくり振り返った。


「碧斗…!」


太陽が追っかけて来てた。ずっと先から走って来たのか、ぜぇはぁと肩を揺らして大きく息を吸ったり吐いたりして、もじもじと、時には俯いたりして何か聞きたそうだった。


「何?なんかあった?」

「あのさぁ…っ」


太陽まで瞳を赤くしていた。


「…おれどうしたらいい?」


あさひもこれくらいしてくれたら、おれだってどうにかしてあげられるのに。


「そんなの簡単じゃん」

「なに…?」

「ごめんって言えばいいんだよ」


あさひはおれに助けてほしくないんだ。
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