10歳差の王子様
ショッピングモールの中に入ったパンケーキ屋はそこそこ混んでいて、数人いた行列に並んでお店に入った。
隅っこの席であさひと向き合って、何のパンケーキにするかメニューを見てお互い食べたいものをあげた。


「「チョコバナナパンケーキ!」」


話し合う間もなくメニューが決まった。


「毎回そうだよね、碧斗と行くと好きなもの同じだから半分コ出来ないんだよね!」

「いつもチョコレートアイスだったからな、2人して」

「ホットケーキには絶対バナナだし」

「それはあさひが俺にバナナあげとけばいいみたいに言ったから!」

「え、そーだっけ?」


そんな話をしながら注文したパンケーキが届くのを待った。焼き上がりに20分以上かかるふわふわのパンケーキ、まだ届くまで時間がある。

急にあさひが背筋を伸ばして、キリっとした瞳で話し出した。

その表情に、緊張が走る。


「パンケーキとホットケーキの違いって知ってる?」

「………。」


予想外の話だった。

突然のあさひのパンケーキトーク、知らないと言って首を振った。


「じゃあなんだと思う?」


やたら自信満々に聞いて来たってことは、確かな情報があるんだな。


「なんだろ…、全然わかんない。何?」

「実は…」


ゴクリと息を飲む。
じっと見合って、謎にドキドキした。


「どっちも同じなの!」

「マジでっ!?厚さじゃないの!?」

「私もそうだと思ってたー!ただ日本がホットケーキって呼んでるだけで同じなんだって!」

「すげぇー、それは知らなかったー!!」


絶対厚さの違いだから、わざと知らないって答えたのに同じだとは思わなかった。

なるほど、じゃあ昔よく焼いてたのもホットケーキでありパンケーキなのか…! 

すごい、新発見だ…!!


「碧斗はそうゆう反応してくれると思ったんだ~!」


ふふふっと口を押えて笑った。


「え?」

「私も同じ反応したの!」


俺の反応がよっぽどよかったのか、パンケーキが届いてもずっとくすくす笑っていた。


「笑いすぎだろ!」

「だって想像通りだったんだもん~!」


だから一緒になって笑った。

楽しいんだ、どうしてもこの瞬間が。

愛しくて、何より大事な時間。


買ってほしいものなんかないよ。

俺はあさひが欲しい。

今、目の前にいるあさひが欲しい。
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