10歳差の王子様
「…碧斗」


さっきまでの乱暴な声から落ち着いた声になった。


「…お前が来ないとあさひが悲しむだろ」


どうしたって悲しませるんじゃないか、俺の気持ちもあさひにとっては。


「…、あさひに会いたくないの?」

「……。」

「もう子供じゃないんだから」


子供だよ。俺はずっと子供だ。

でもどうせならずっと子供のままでいたかった。そしたらいつまでもあさひと手を繋いでいられたのに。


「あさひに、言うことあるだろ?」

「………。」

「大事なこと、あるだろ!」

「兄貴が決めつけんなよ、ムカつく」

「俺は碧斗の兄ちゃんだからな!お前より知ってることも多いんだよ!」

「……っ」

「碧斗!ほら!」


………。

兄貴が俺の何を知ってるんだよ。

あさひより先に生まれた兄貴にはわからないだろ。

俺だって本当は…っ



わかってるんだよ…



ゆっくりと腰を上げ、ドアに近付き鍵を開けた。
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