「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?

「余命三か月」

「なんですと? 三か月しか生きられない?」
「ええ、間違いありません。お気の毒なことではありますが」

 お父様の執務室の前で扉に右耳をくっつけ、盗み聞きしている。

 そうなんだ。三か月しか生きられないのね。

 それを冷静に受け止めている自分に自分でも驚いてしまった。

「し、しかし、まったくそのようには見えませんが……」
「公爵閣下、それがこの病の特徴でしてね。ちょっと調子が悪いのかなと思っていると、すぐにまたいつものように見えます。そのときにはもう手遅れというわけです。その時点で余命三か月。しかも、発病してから三か月後に死ぬまで、なんと一花咲かせるのです。しかも大輪の花を。これでもかというほどに。最期の力を振り絞るのでしょう」

 主治医のヘンリック・シュターベルクは、今日も絶好調ね。

 彼は、わたしを診察するときには愛想がないのになにかしら語らせると舌がまわりっぱなしになる。
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