「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
「アイ、嫌なことをする必要はないわ。あなたがいなくなると、屋敷内が寂しくなる。だから、無理して行くことはないの」
お父様は、使用人たちにはわたしの余命のことは知らせていないでしょう。でも、継母には告げたはず。
寂しくなる、だなんて。
彼女のあいかわらずの熱演に拍手を送りたくなった。
「ご心配なく。いまは興味津々なのです。嫌々でも無理をしているわけではありません。というわけで、当分戻って参りませんので」
わたしがいったん「こうするの」と宣言したら、この大陸が沈もうが世界が破裂しようが、だれかがどうにか出来るものではない。
この場にいる全員が、それを嫌というほど知っている。
全員がただ呆然と見守る中、高笑いしながら去った。
両手にトランクを持ち、高笑いしながら颯爽と去るその姿は、自分でも言うのもなんだけどシュールすぎる。
まっ、「孤高の悪女」にぴったりな退場よね。
ここに帰ってきたとき、大輪の花を咲かせて燃え尽きた後かもしれないわね。
馬車道を門に向って歩きながら、屋敷を振り返った。
お父様たちみんなが外に出て、こちらを睨んでいる。
きっとちゃんと皇宮に行くのかどうかを見届けたいに違いない。
これからは、静けさを存分に味わうといいわ。
前を向いた。もう二度と振り返らなかった。
お父様は、使用人たちにはわたしの余命のことは知らせていないでしょう。でも、継母には告げたはず。
寂しくなる、だなんて。
彼女のあいかわらずの熱演に拍手を送りたくなった。
「ご心配なく。いまは興味津々なのです。嫌々でも無理をしているわけではありません。というわけで、当分戻って参りませんので」
わたしがいったん「こうするの」と宣言したら、この大陸が沈もうが世界が破裂しようが、だれかがどうにか出来るものではない。
この場にいる全員が、それを嫌というほど知っている。
全員がただ呆然と見守る中、高笑いしながら去った。
両手にトランクを持ち、高笑いしながら颯爽と去るその姿は、自分でも言うのもなんだけどシュールすぎる。
まっ、「孤高の悪女」にぴったりな退場よね。
ここに帰ってきたとき、大輪の花を咲かせて燃え尽きた後かもしれないわね。
馬車道を門に向って歩きながら、屋敷を振り返った。
お父様たちみんなが外に出て、こちらを睨んでいる。
きっとちゃんと皇宮に行くのかどうかを見届けたいに違いない。
これからは、静けさを存分に味わうといいわ。
前を向いた。もう二度と振り返らなかった。