「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 そう。彼には意中のレディがいる。そして、その彼の意中のレディもまた、彼を愛している。

 つまり、彼らは相思相愛というわけ。

 だからこそ、皇太子妃候補を集めて修行をするとか選考するとか、そんなものは必要ない。

 それはともかく、わたしがここにやって来たのは、その彼の意中のレディを守る為、そして、二人をくっつける為。

 これまで散々他人の嫌がることをやって来て、いまからさらに嫌がることをする。その上で、唯一自分では「いいこと」をやって、死ぬのもいいかもしれない。

 もっとも、その手段が嫌がられることだけど。

 それでもコルネリウスがしあわせになれるのなら、やり甲斐があるというもの。

「おいっ、アイッ」

 彼の呼ぶ声が何度も背中にあたったけれど、それに応じることはしなかった。

 これ以上、心臓が震えない為に……。
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