「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 それにしても、コルネリウスはいよいよ覚悟が出来たのね。遅すぎる感はあるけれど。

 それでも、やっとアポロニアに告白する決意をしたのね。

 これでやっと、ヒロインがしあわせになれるのね。

 うれしいはずなのに、どうして胸のあたりが痛いのかしら? 

「余命三か月」、と診断されたときのようなムカムカではない。

 チクチクというかジクジクというか、とにかく痛い。

「皇帝皇妃両陛下の承諾は得ています。今回、皇太子妃候補の修行に集まってくれたみなさんには、あらためて謝罪するつもりです」

 胸の痛みをやりすごそうと必死になっていると、コルネリウスは全員に頭を下げた。

「本日をもって皇太子妃候補の修行は終わりにします。ですが、せっかく集まってくれたのです。もうしばらく皇宮で楽しんでください。美術品、本、グルメなどなど、ふだんは接することのない物を見ることが出来るでしょうし、体験出来ないことが出来ると思います。みなさんには、出来るだけ権限を与えます。自由気ままにすごしていただいて結構です」

 彼の宣言にどよめきが起こった。

 広間内がリラックスモードになり、笑顔で溢れた。

 ただ一人をのぞいて、みんな皇太子妃候補の修行が終ったことがうれしいみたいだった。

 カサンドラ・ヴァレンシュタイン公爵令嬢をのぞいて……。
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