「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
大理石の床上に、彼女の自慢の顔にあたったものが転がっている。安物の宝石箱である。落下した衝撃でふたが開き、中身が飛び出している。
玄関ホール上のシャンデリアの灯りを受け、二つのガラス玉が安っぽい光を発している。
「『オッドアイの泪』って、たしか金貨には換算出来ない貴重な宝石よね」
本物は、その名のごとく二色のアメジストときいている。
こんなガラス玉などではなく。
「ど、どうして? どうしてアイが持っているのよ」
カサンドラは金切り声を上げた。
「決まっているわ。『孤高の悪女』だからよ」
それがさも正論だというように応じた。
彼女は、「部屋に埃がたまっているので至急掃除をして欲しい」、とアポロニア専属の侍女を呼びつけ命じた。そして、侍女が掃除をしている間に、侍女の掃除用具の中に宝石箱を忍ばせたのである。
じつは、カサンドラがなにかしでかすことを見越していた。だから、侍女や執事たちに言いつけたのである。
カサンドラに関わることはすべて教えて、と。
彼女の部屋に掃除に行った侍女は、その足でわたしのところに来た。そして、彼女の掃除用具の中の宝石箱を見つけたのだ。
それにしても、もうちょっとマシな方法はなかったの?
ガラス玉を目の当たりにした全員が、彼女にそう尋ねたくなっているに違いない。
そのとき、玄関ホールにまただれか入って来た。
玄関ホール上のシャンデリアの灯りを受け、二つのガラス玉が安っぽい光を発している。
「『オッドアイの泪』って、たしか金貨には換算出来ない貴重な宝石よね」
本物は、その名のごとく二色のアメジストときいている。
こんなガラス玉などではなく。
「ど、どうして? どうしてアイが持っているのよ」
カサンドラは金切り声を上げた。
「決まっているわ。『孤高の悪女』だからよ」
それがさも正論だというように応じた。
彼女は、「部屋に埃がたまっているので至急掃除をして欲しい」、とアポロニア専属の侍女を呼びつけ命じた。そして、侍女が掃除をしている間に、侍女の掃除用具の中に宝石箱を忍ばせたのである。
じつは、カサンドラがなにかしでかすことを見越していた。だから、侍女や執事たちに言いつけたのである。
カサンドラに関わることはすべて教えて、と。
彼女の部屋に掃除に行った侍女は、その足でわたしのところに来た。そして、彼女の掃除用具の中の宝石箱を見つけたのだ。
それにしても、もうちょっとマシな方法はなかったの?
ガラス玉を目の当たりにした全員が、彼女にそう尋ねたくなっているに違いない。
そのとき、玄関ホールにまただれか入って来た。