「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 うっとりしながら、アポロニアにひっかけられたと悟った。

 彼女は、わざとコルネリウスを悪く言い、わたしに擁護させたのだということを。

 アポロニアは、わたしよりよほど「悪女」だわ。

 敗北を認めざるを得ない。

 やっとコルネリウスの唇が離れた。だけど、彼はまだわたしを抱きしめている。

「おめでとう、アイ。自慢の娘の結婚は複雑だがね」
「あなた、婚儀で『やはり嫁にはやらん』と反対しだしたり、手が付けられないくらい号泣なさらないでくださいね。ですが、ほんとうにうれしいですわ。わたしの自慢の娘でもあるのですから」
「父上、母上。可愛い妹をよその男にやるのは複雑ですが、彼女のしあわせを考えたら涙を呑むしかないのですね」

 お父様と継母と異父兄は、やっとわたしを屋敷から追いだせるからよろこんでいる。
< 63 / 64 >

この作品をシェア

pagetop