「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
「アイ、ほんとうに? 後悔しない?」

 彼女は、まだ良き継母を演じている。

 だから、勝手にやらせておいた。


「お嬢様っ!」

 部屋へ戻ると、メイドのヨハンナが手に紙片を持ってカンカンに怒っている。

 ははーん。どうやらいたずらにひっかっかったのね。

 クローゼットの中に藁で作った人形を忍ばせておいたのである。

「どういうことですか?」

 彼女の横をすり抜け、さっさと部屋に入った。すると、彼女は可愛らしい顔を真っ赤に染めて追いかけてくる。

「きまっているわ」

 このバッハシュタイン公爵家に味方はいない。家族、使用人たちは、みんなわたしを毛嫌いしているし、蔑ろにしている。

 だからこそ、いつも傲慢でわがままでいるようにしている。つねに彼らを威嚇し、ことあるごとに攻撃する。

 というわけで、みんなどれだけわたしのことを嫌っているのか、それはもう想像するまでもない。
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